サブリース契約のメリット・デメリット|危険と言われる理由
「空室が出ても、家賃は当社が全額保証します!あなたはずっと寝ているだけで、毎月安定した家賃収入が約束される魔法の契約です!」
新築アパートの建築営業マンや、投資用ワンルームマンションの販売員が、印鑑を押す直前のカモ(素人投資家)に必ず囁くこの魅惑的な謳い文句。これが、不動産業界に数え切れないほどの自己破産者と絶望を生み出し続けてきた悪名高き『サブリース(家賃保証)契約』の正体です。
確かに、「空室リスクをゼロにしてくれる」という響きは、初めて数千万円の借金を背負う初心者にとって、砂漠で見つけたオアシスのように魅力的に映るでしょう。しかし、結論から言えば、日本の法律(借地借家法)と不動産業界の力関係において、サブリース契約とは【大家の首に巻かれた、いつでも業者が締め上げることのできる真綿の首輪】に他なりません。
「30年一括借り上げ保証」とデカデカと書かれたパンフレットの隅には、虫眼鏡でなければ読めないような小さな文字で、大家にとって致命的となる「免責事項(業者の逃げ道)」がびっしりと書かれています。そして、築年数が経ち本当に空室が目立ってきた一番苦しい時期に、業者はその免責条項という名の刃を剥き出しにして、あなたに牙を剥くのです。
本記事では、約の特大ボリュームで、素人を自己破産へと追い込む「サブリース契約の恐ろしい真実(危険と言われる理由)」をプロの投資家目線で徹底的に解剖します。サブリース特有の利益の二重取りメカニズムから、数年後に必ずやってくる強制的な「家賃減額請求」の恐怖、そして一度契約してしまったら最後、日本の法律では絶対に業者をクビ(解約)できないという地獄のような「借地借家法の逆転現象」までを完全暴露。さらに、メリットを満喫しつつリスクを避けるための「契約前に絶対に確認すべき死守ライン(注意点)」もお伝えします。この記事を最後の一文字まで読めば、あなたは二度と「家賃保証」という甘い毒林檎に騙されることはなくなるはずです。
サブリースの仕組み
サブリース契約の危険性を理解するためには、まずその「お金の流れ(ビジネスモデル)」を正確に把握する必要があります。サブリースとは、単なる「管理の代行」ではなく、法律上は『不動産会社(サブリース業者)があなたのアパートを丸ごと借り上げ(賃貸借契約を結び)、彼らが自らの責任で入居者に又貸し(転貸)して利益を抜くビジネス』を指します。
「家賃のピンハネ(利益の二重取り)」のメカニズム
通常の賃貸管理(管理委託契約)の場合、あなたは不動産会社に家賃の「5%程度」の手数料を支払い、残りの95%があなたの口座に入ってきます。空室が出ればその部屋の家賃はゼロになりますが、満室になれば95%の巨大なリターンを全て享受できるフェアな関係です。
一方、サブリース契約(例えば家賃保証率90%)の場合のお金の流れはこうなります。
入居者が払う家賃は10万円。しかし、あなたが業者から受け取る保証家賃は「9万円(90%)」で固定されます。差額の1万円(10%)は、業者が毎月手数料として持っていきます。
ここまでは普通に見えますが、問題はここからです。入居者が退去した際、新しい入居者から取る「礼金(1ヶ月分〜2ヶ月分)」や、2年ごとの「更新料(1ヶ月分)」といった巨大なボーナス収益。サブリース契約の場合、これらは基本的に【すべて業者のポケット(利益)】に入ります。大家には1円も還元されません。
つまりサブリース業者は、「毎月の10%の保証手数料」と「礼金・更新料の全額独占」という、凄まじい利益の二重取りシステムを構築しているのです。
業者が絶対に損をしない「免責期間」
さらに狡猾なのが、「免責期間(めんせききかん)」というルールの存在です。
新築が完成した直後や、退去が発生して新しい入居者を募集する際、業者は「最初の1ヶ月間(または2ヶ月間)は、空室リスクが高いため家賃の保証を免除(ストップ)させてもらいます」という特約を必ずつけてきます。
最も家賃収入が途絶えやすい「退去直後の数ヶ月間」のダメージはしっかり大家に負わせ(家賃ゼロ)、満室になって安定稼働し始めたら、ちゃっかり毎月10%を手数料として抜き続ける。これが、業者が絶対に損をしないように緻密に計算された「家賃保証」という名のビジネスモデルの正体です。
メリット(サブリースが活きる限定的なケース)
ここまでボロクソに書きましたが、サブリースが「100%絶対悪」かと言えばそうではありません。特定の属性(極端な面倒くさがりや、巨大な資産家)にとっては、手数料という高いコストを払ってでも利用する価値がある「限定的なメリット」が確かに存在します。
? 毎月の「収入変動リスク」が絶対にゼロになる
最大のメリットはやはりこれに尽きます。「今月は3部屋退去が出たから、ローン返済が赤字になりそうだ…」といった、不動産経営における心臓に悪い「キャッシュフローの乱高下」から完全に解放されます。
たとえアパートの半分が空室になろうとも、業者が倒産しない限り、契約した保証家賃(90%など)が毎月寸分違わずにあなたの口座に振り込まれ続けます。「経営(マーケティングや空室対策)」のプレッシャーを一切負うことなく、ただ通帳の記帳だけを楽しみたいサラリーマンや、預金が数億円あって細かな利回りを気にする必要がない地主にとっては、お金で最高級の「静寂(安心)」を買っていると言えます。
? 確定申告(経理処理)が極端にシンプルになる
アパートが10室、20室と規模が大きくなると、毎月の家賃入金チェック、退去時の日割り家賃の精算、礼金や敷金、修繕費の仕訳など、確定申告のための経理作業(記帳)が恐ろしく煩雑になります。
サブリース契約の場合、あなたにとっての借主は「サブリース業者1社のみ」となります。毎月、業者から【保証家賃◯十万円】という固定額がドカンと1件振り込まれるだけなので、日割り計算や細かな入出金のチェックが一切不要になります。税理士に払う報酬額を抑えられたり、自分の時間を圧倒的に節約できるという点では、非常に優れたシステムです。
? 入居者トラブル・裁判の「当事者」にならずに済む
前回の記事で解説したような「悪質な家賃滞納(裁判・強制執行)」や、「入居者同士の騒音トラブルでの傷害事件」、最悪のケースである「孤独死・自殺などの心理的瑕疵」が起きた場合でも、サブリース契約(転貸借)であれば、法的な当事者としての泥沼の交渉や処理は、すべて「貸主(転貸人)」であるサブリース業者が矢面に立って処理の責任を負ってくれます。大家は遠くからその報告を聞くだけで済みます。
デメリット(素人を破産に追い込む3つの牙)
上記のようなメリットを理解した上で、それでも多くの先輩大家たちが「サブリースだけは絶対にやめておけ」と警告する理由。それは、「30年保証」という言葉の裏に隠された、業者がいつでも合法的に振るうことができる【3つの殺傷能力(デメリット)】が存在するからです。
恐怖の牙?:数年ごとに必ず起きる「家賃の強制減額」
「30年一括借り上げ!」というデカデカとした広告を、「30年間ずっと同じ金額の家賃を払い続けてくれる」と勘違いしている人が多すぎます。契約書の小さな文字をよく読んでください。そこには必ず「※ただし、2年(または丸年)ごとに、経済情勢の変化等により『家賃の見直し(減額協議)』を行うことができる」という爆弾が仕掛けられています。
新築から最初の5年〜10年は平和です。しかし、建物が古くなり本当に入居者が入りづらくなってきた時期(つまりあなたが一番保証してほしい時期)に、業者はこう突きつけてきます。
「今の保証金額ではうちも赤字でやっていけません。来月から保証家賃を【20%カット(減額)】させてください。嫌なら、保証契約自体を『解除(打ち切り)』させていただきます」。
あなたはローン返済の計算が狂いパニックになりますが、これを拒否することは実質不可能です。業者は「家賃を下げる権利(借地借家法第32条・賃料減額請求権)」を法律によって強烈に保護されているため、大家は涙を飲んで減額を受け入れるしかなく、手元のキャッシュフローは一瞬で崩壊します。
恐怖の牙?:相場より「割高な修繕費」を強制的に搾取される
サブリース契約のもう一つの巨大な闇が「修繕工事の囲い込み」です。
契約書には、「外壁塗装や屋根の防水工事などの大規模修繕、および退去時の原状回復工事は、必ず『指定する業者(つまりサブリース会社の関連子会社)』に発注しなければならない」という縛りが入れられています。
この指定業者の工事見積もりは、相見積もりを取った一般の地場の工務店に比べて【1.5倍〜2倍(数百万円単位)】も割高に設定されていることが普通です。
「保証家賃をキープしてほしければ、うちの高い指定業者で200万円の壁の塗装をやりなさい」と脅され、毎月の家賃保証で守ってもらったわずかな利益を、一発のぼったくり工事で数百万円単位で根こそぎ回収される。これがサブリース業者の真のマネタイズ(利益回収)手法なのです。
恐怖の牙?:法律(借地借家法)による「大家側の完全な敗北」
「こんなひどい条件なら、もうサブリースなんて解約して、別の管理会社に変えてやる!」。あなたがそう怒りに震えて解約を申し入れても、業者は鼻で笑ってこう答えます。「借地借家法に基づき、大家からの解約は拒否します。私たちが退去する『正当事由』はありませんからね」。
ここが、日本の法律の最大の罠です。サブリース契約において、業者は「借主(居住者と同じ立場の弱者)」として扱われます。日本の法律(借地借家法)は借主を異常なまでに保護しているため、大家(貸主)側から一方的に「解約して出て行け」と言うことは、事実上、日本の裁判所では【絶対に不可能】とされています。
業者は「家賃を下げる権利(減額)」と「解約を拒否して居座る権利(更新)」という最強の盾と剣を法律から与えられており、大家側には何の武器もありません。「家賃を下げられ、高い指定工事を強要される状態」を、30年間という無間地獄の中で延々と受け入れ続けるしかない。これが、知識のない素人が陥るサブリースの最終形態です。
契約時の注意点(死守ライン)
それでも事情があって(銀行の融資条件などでどうしても外せずに)サブリース契約を結ばざるを得ない場合、以下の「3つの死守ライン(注意点)」だけは、契約前に血眼になって確認(または交渉して特約に追加)してください。これを見逃せば、あなたの未来はありません。
? 「中途解約条項」における『大家側の違約金ルール』の明記
先述の通り、法律上は大家からの解約は不可能です。しかし、契約書特約に「大家側は、保証家賃の◯ヶ月分(例:6ヶ月分)の『違約金・解決金』を支払うことで、無条件でサブリース契約を解約できるものとする」という強力な一文を入れさせることができれば、話は全く変わります。
「数百万円の現金(ペナルティ)を払えば、この悪魔の契約から合法的に抜け出せる(売却して清算できる)」という【出口のドア(非常口)】の鍵を持っているかどうか。これが、契約後に自分の首を絞められるかどうかの絶対的な防衛線となります。この条項を絶対に入れないと言う業者とは、契約してはいけません。
? 「免責期間」を短く(1ヶ月以内に)交渉する
退去後の「家賃保証がストップする免責期間」が、業者の用意した標準の契約書では「2ヶ月(ひどい時は3ヶ月)」に設定されていることがあります。3ヶ月も家賃保証が切れるなら、もはや保証の意味がありません。「免責期間は『1ヶ月』まで。それ以上は一切認めない」と強気に交渉し、契約書を書き換えさせてください。優良な(またはどうしてもあなたを取り込みたい)業者であれば、渋々応じるはずです。
? 工事の「相見積もり(業者指定の解除)」を勝ち取る
「大規模修繕工事や原状回復工事について、指定業者だけでなく『大家が探してきた別の業者での相見積もり・施工』を認める」という1文を入れさせます。
業者の最大の利益源(ぼったくり工事)を潰す交渉なので極めて難航しますが、ここを妥協すると数十年後に数千万円単位の富を吸い取られます。「この工事指定が外せないなら、この新築アパートの建築契約自体(あるいはマンションの購入自体)を白紙にする」という、究極のカードを切ってでも死守すべきポイントです。
まとめ
「サブリース(家賃保証)」という響きは、不労所得を夢見る初心者にとって麻薬のような甘さを持っています。
しかし、その実態は、法律(借地借家法)という名の強固な甲冑を着込んだ業者が、あなたのキャッシュフローから「毎月のピンハネ」「礼金・更新料の独占」「割高な工事費の強制」という3本のストローを突き刺し、あなたの資産(血)を最後の一滴までチューチューと吸い尽くすための【完璧な搾取システム】です。
不動産投資の真の醍醐味とリターンは、自分でリスク(空室リスクや修繕の手配)という経営上のプレッシャーを背負い、適切な管理会社と二人三脚で物件価値を高めていく「能動的なオーナーシップ(大家力)」の中からしか生まれません。
業者の「私たちがすべて保証して丸抱えしますよ」という甘い言葉の後ろには、必ず「だから、あなたの利益はすべて私たちが奪いますし、一生逃しませんよ」という本音が隠されています。
もしどうしてもサブリースを利用するなら、「違約金を払えば抜け出せる(解約特約)」という一本の命綱だけは絶対に手放してはいけません。
投資家たるもの、自らの城(物件)のコントロール権(決定権)決して他人に委ねてはなりません。「リスクを他人に丸投げする者は、最後には全財産を丸投げすることになる」。これこそが、不動産投資の世界で最も重く、そして残酷な、サブリースの真実なのです。