不動産投資の確定申告のやり方|必要書類と手順
サラリーマンとして会社員生活を送っていると、毎月のお給料からは問答無用で税金が天引きされ、年末調整という名のシステムによって経理担当者がすべてを代わりに計算してくれます。税金とは「国から勝手に持っていかれるもの」であり、自分で計算して申告する機会など一生ないと思っている人が大半でしょう。
しかし、ひとたびあなたが不動産投資を始め、家賃収入という「事業収入」を得たその瞬間から、あなたは国から一人の「経営者(事業主)」として扱われます。サラリーマンとしての給料と、不動産から生み出された事業の利益(または赤字)を合算し、「私は今年、これだけ稼いで、これだけ経費を使いました。だから税金はこれだけ払います(あるいは還付して返してください)」と、自らの手で国(税務署)に宣言しなければなりません。それが『確定申告』です。
「難しそう」「数学が苦手だから無理」とアレルギー反応を起こす必要は全くありません。不動産投資の確定申告(不動産所得の申告)は、一度やり方のフローさえ覚えてしまえば、毎年同じことの繰り返しとなるパズルゲームのようなものです。むしろ、この確定申告という「合法的な税金のコントロール権」を手に入れることこそが、副業として不動産投資を行う最大のメリット(最大の旨味)でもあります。
本記事では、約の徹底解説を通じて、初めて確定申告を迎える新米大家さんに向けた【不動産投資の確定申告の完全ロードマップ】をお届けします。集めるべき「必要書類(証拠)」の一覧から、青色申告と白色申告のお得な「記帳方法」の違い、税務署に行かずに終わる「提出方法(e-Tax)」、そして初心者が必ず陥る「恐ろしいミス(経費の過大計上や減価償却の罠)」まで、プロの目線で徹底的に解剖します。この記事を読めば、あなたは税務署からの通知に怯えることなく、涼しい顔で最大のキャッシュ(手残り)を手にする賢い大家へとステップアップできるはずです。
必要書類
確定申告は「1月1日から12月31日まで」の一年間に発生したすべての収入と支出を、翌年の「2月16日から3月15日まで」の1ヶ月間に税務署に報告するイベントです。この期限に間に合わせるためには、年が明ける前から着々と「証拠となる書類」を集めておく必要があります。
? 収入を証明する書類(いくら稼いだか)
まずは「あなたに家賃がいくら入ってきたか」を証明する書類です。
・不動産管理会社から毎月送られてくる「家賃送金明細書(月次報告書)」
・管理会社を通していない場合は、家賃が振り込まれているあなたの「銀行口座の通帳のコピー」
これらを12ヶ月分きっちりと集め、年間の家賃(および共益費や礼金、更新料など)の合計額を正確に算出します。礼金や更新料も立派な「収入」としてカウントしなければ税務署から脱税を疑われるため注意してください。
? 経費を証明する書類(いくら使ったか)
不動産所得の計算において最も重要であり、節税の鍵を握るのが「経費の証明」です。「これは事業(物件管理)のために使ったお金ですよ」という証拠(パスポート)となるのが、領収書やレシート、請求書です。
・固定資産税や都市計画税の「納税通知書・領収済通知書」
・火災保険・地震保険の「証券と領収書(支払調書)」
・退去に伴うリフォームや、エアコン交換などの「工事請負契約書・請求書・領収書」
・物件を見に行くための交通費(ETC履歴や新幹線チケット)、業者との打ち合わせのカフェ代などの「レシート」
これらの経費関係の書類は、提出自体は不要ですが、税務署から「見せてください」と言われた時のために『7年間』自宅で厳重に保存しておく義務があります。
? 購入時の書類・ローン関連書類(巨大な経費の源泉)
その年に物件を買った場合、購入時に発生した巨大なお金も経費や減価償却の対象となります。
・物件の「売買契約書・重要事項説明書・建築確認済証」
・購入時に支払った仲介手数料や登記費用(司法書士への請求書)
そして、毎年銀行から送られてくる「年末借入金残高証明書」および「ローン返済予定表」です。この返済予定表に記載されているローンの「利息部分のみ」が経費として計上できます(元本部分は経費になりません)。
? サラリーマンとしての「源泉徴収票」
忘れてはならないのが、あなたの本業である会社から年末から年明けにもらう「源泉徴収票(げんせんちょうしゅうひょう)」です。不動産の収支計算と、このサラリーマンの給与所得を合算(損益通算)することで、最終的なあなたが支払うべき税金が決定します。もし不動産が赤字(減価償却などにより)であれば、給与天引きで支払い過ぎていた税金がドカンと「還付(キャッシュバック)」されることになります。
記帳方法
1年分の領収書と明細書が山のように集まったら、次に行うのが「記帳(きちょう)」です。記帳とは、集めた書類をルールに従って会計ソフト(帳簿)に入力していく作業です。この申告(記帳)の方法には、初心者向けの「白色申告」と、絶対にお得な「青色申告」の2種類が存在します。
? 白色申告(お小遣い帳レベルの簡単申告)
白色申告は、事前の届出が不要で、誰でも簡単に行える申告方法です。「単式簿記」という、小学生のお小遣い帳のような「いつ、何に、いくら使ったか」という収入と支出の記録だけで済むため、簿記の知識がゼロでも簡単に作成できます。
しかし、「簡単な代わりに、国からの節税ボーナス(特別控除)が一切ない」というのが最大のデメリットです。不動産投資のように何千万円ものお金が動く事業において、あえてボーナスのない白色申告を選ぶメリットはほぼゼロと言っていいでしょう。
? 青色申告(最強の節税効果を持つプロの申告)
稼いでいる大家の100%が選択しているのが「青色申告」です。
事前の届出(青色申告承認申請書)を税務署に提出し、少しだけ複雑な「複式簿記(借方・貸方という概念を使ったプロの記帳ルール)」で帳簿をつけることを条件に、国から絶大な節税ボーナスが与えられます。
【青色申告の3大メリット】
・青色申告特別控除(最大65万円):帳簿(貸借対照表と損益計算書)を電子申告で提出するだけで、「実際の経費とは別に、最大65万円分を架空の経費として差し引いていいよ(税金を安くするよ)」という魔法のボーナスです。
・赤字の繰越(最大3年間):もし今年、大規模修繕などで不動産事業が超巨大な「赤字」になってしまった場合、その赤字を翌年以降に最長3年間ストック(繰り越し)し、翌年の黒字から差し引いて税金を無効化できる強力な仕組みです。
・少額減価償却資産の特例:通常は数年に分けて経費にしなければならない「30万円未満のパソコンや機材」を一発で全額経費として落とせるようになり、目先のキャッシュを強力に守れます。
「でも、複式簿記なんて簿記の資格がないと無理でしょ?」と心配する必要はありません。現代のクラウド会計ソフト(マネーフォワードやfreeeなど)を使えば、銀行口座やクレジットカードと自動連携し、家計簿アプリのような簡単な入力画面に数字を入れるだけで、AIが裏で勝手にプロ仕様の「複式簿記」の帳簿を自動生成してくれます。年間1万円程度のソフト代(これも経費になります)を払うだけで最大65万円の控除という巨大な現金リターンが得られるため、不動産投資において「青色申告+クラウド会計」は絶対のテンプレートなのです。
提出方法
クラウド会計ソフトで売上と経費を入力し終え、「青色申告決算書」と「確定申告書」のデータが完成したら、最後にこれを国(税務署)に提出します。昔のように、凍えるような寒さの中、何時間も待たされる税務署の長い行列に並ぶ必要はもうありません。
? e-Tax(電子申告)が現在の絶対的な主流
現在、最もスタンダードかつメリットが大きい提出方法が、インターネットを使って自宅からデータを送信する「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」です。
スマートフォン(またはマイナンバーカードを読み取れるカードリーダー付きのパソコン)とマイナンバーカードさえあれば、先ほど作成したクラウド会計ソフトの画面から「申告する(送信)」ボタンをポチッと押すだけで、一瞬にして提出が完了します。
e-Taxを使う最大の理由は単なる「手間の削減」だけではありません。前述の【青色申告特別控除】において、紙の書類を印刷して郵送したり、窓口に持参したりした場合は控除額が「55万円」に減額されてしまいます。最高の「65万円控除」の満額ボーナスをもらうための必須条件が、この「e-Taxによる電子申請」を行うことなのです。
? 税金の納付(または還付金の受け取り)
申告が無事に完了すると、ソフトが自動計算した結果に基づいて、「あなたがいくら税金を払うか(あるいは返ってくるか)」が確定します。
もし追加で税金(所得税)を支払う必要がある場合は、クレジットカード決済やPayPayなどのスマホアプリ決済、コンビニ納付などが利用できます。現金を減らさずにクレジットカードのポイントを貯めることができるため、キャッシュレス納付が圧倒的におすすめです。
逆に、減価償却費などの影響で本業のサラリーマン給料から税金を引かれすぎていた場合(還付)は、申告から約1ヶ月〜1ヶ月半後に、あなたが指定した銀行口座にドカンと「還付金」という名のお小遣い(キャッシュ)が振り込まれます。
よくあるミス
不動産投資の確定申告は、パズルゲームのようにパターン化されているとはいえ、初心者が「手探り」でやると必ずといっていいほど罠にハマる(致命的なミスを犯す)ポイントがいくつか存在します。これを間違えると、後日税務署から「税務調査(お尋ね)」が入り、最悪の場合は重加算税という厳しいペナルティを受けることになります。
恐怖のミス?:ローンの「元本」を経費にしてしまう
不動産投資家が起こす間違いのダントツの1位がこれです。毎月銀行に払っているローン返済額(例えば10万円)を、そのまま全額「必要経費」として入力してしまうミスです。
過去の記事でも再三お伝えしている通り、ローン返済額のうち、経費として認められるのは『利息(金利)部分だけ』です。「元本部分」はあなたの借金(負債)が減って資産が増えているマイナスゼロの行為とみなされるため、絶対に経費にはなりません。この巨大な元本部分を経費に計上してしまうと、「経費の過大申告(脱税)」として税務署のコンピューターに一発で弾かれます。
恐怖のミス?:プライベートの支出を無理やり経費で落とす
「大家なんだから、自分の車も高級レストランの食事代も全部経費にできる!」と思い込んでいる素人大家がいます。
税務署は「その支出が、不動産収入を生み出すために直接必要だったか(事業関連性)」という一点のみを冷徹にチェックします。
家族とのハワイ旅行を「不動産視察費」としたり、個人的に買った高級スーツや時計を「営業用の接待費」として計上していると、税務調査が入った際に「これは個人的な消費(家事費)ですね」と否認され、追加の税金(追徴課税)と罰金(延滞税)を支払わされます。「税務署に説明できない領収書は経費に入れない」という潔さが、のちの地獄を防ぐ最大の盾となります。
恐怖のミス?:建物の「減価償却」の計算ミス
不動産事業における最大の経費であり、複雑怪奇な計算を要するのが「減価償却費」です。土地と建物の金額を正確に按分(あんぶん)し、建物の耐用年数に応じて毎年少しずつ経費化していくこの計算は、素人が自力でエクセルで行うとほぼ確実に間違えます。
木造の法定耐用年数(22年)や、中古物件を買った際の特殊的かつ有利な計算ルール(簡便法)を間違えて、「本当はもっと巨額の経費を計上できたのに、知識がなくて損をした」あるいは「過大に計上しすぎて税務署から怒られた」という事態が頻発します。最初の1年目(物件を買った年)の減価償却の設定だけは、税理士単発で相談するか、クラウドソフトのサポート制度をフル活用して「絶対に間違えない数値」を最初のボタンとして掛けさせることが極めて重要です。
まとめ
確定申告は、決して「税務署に怯えながらやる面倒な義務」ではありません。それは、サラリーマンという「税金を取られるがままの羊」から抜け出し、合法的かつ戦略的に自分の手元から出ていく現金(キャッシュフロー)をコントロールするための、最強の「資本家の武器」です。
物件を買った時の契約書から日々の交通費のレシートまで、証拠(武器)となる必要書類を1年間かけて漏れなくかき集めること。
難しそうな「青色申告(複式簿記)」の作業を、年間1万円のクラウド会計ソフトに丸投げし、最大65万円という国からの絶大なボーナス(特別控除)をノーリスクで強奪すること。
そして、税務署に並ぶことなくスマホ一台で「e-Tax電子申請」をスマートに完了させ、ローンの元本計上やプライベート経費の混同という素人丸出しのミスを完璧に回避すること。
この一連の「正しいフロー」を一度自分の血肉へと落とし込んでしまえば、来年からは数時間の作業で何十万円という税金(キャッシュ)を手元に引き戻すことができるようになります。確定申告というゲームのルール(税制)を熟知し、自らの手で堂々と利益と税金を操る力を手に入れること。これこそが、不動産投資における「真の自立した経営者」への最後の登竜門なのです。