家賃滞納の対処法|オーナーが取るべき対応手順
不動産投資において、空室リスクや金利上昇リスクと並んで、オーナーの精神と財布を最も強烈に削り取る最大の恐怖。それが「家賃滞納」です。
「毎月決まった日にチャリンチャリンと家賃が振り込まれる」。そんな不労所得の夢は、通帳に記帳した際に「あれ、今月◯号室からの入金がないぞ…?」と気づいた瞬間に脆くも崩れ去ります。家賃が1ヶ月でも入らなければ、あなたが銀行に支払うローンの返済は、完全にあなた自身の財布からの「持ち出し(現金流出)」へと変わります。もし滞納が数ヶ月続けば、キャッシュフローは一瞬で赤字に転落し、黒字倒産へのカウントダウンが始まってしまうのです。
さらに恐ろしいことに、日本の法律(借地借家法)は「借りている側(入居者)」を極端なまでに強力に保護しています。「家賃を払わないなら出て行け!」と力ずくで追い出すことはできず、オーナー側が感情に任せて間違った対応をしてしまうと、最悪の場合、あなたが「犯罪者」として逮捕されたり、多額の損害賠償を請求されるという理不尽な事態に発展します。
本記事では、約の特大ボリュームで、家賃滞納トラブルの全貌を徹底解剖します。滞納が発覚してから入居者が夜逃げや居座りに至るまでの「泥沼化のメカニズム」から、絶対にやってはいけない「法律違反(自力救済)のタブー」、そして法律に則って確実にお金を回収し退去に追い込む「正しい法的対応の5ステップ」をプロの目線で完全解説します。さらには、この恐ろしい滞納リスクを『完全にゼロ(0%)』にするための究極の予防策(保証会社の活用術)までお伝えします。この記事を読めば、あなたは理不尽な家賃滞納トラブルに怯えることなく、冷徹かつ的確に賃貸経営というビジネスをコントロールできる強靭な大家になれるはずです。
滞納の流れ
家賃滞納は、ある日突然「今日から一切払いません!」と宣言されるわけではありません。それは、借金取りに追われる多重債務者のように、小さな「遅れ」から始まり、数ヶ月かけて徐々に「支払い不能(泥沼)」へと悪化していく、明確なパターン(プロセス)を持っています。初期症状を見逃さないことが、傷を浅く保つ最大のカギとなります。
? 第1段階「うっかり忘れ期」(滞納1日〜1週間)
月の初め、入金確認をした際に引き落としがされていない状態です。この段階では、多くの入居者に悪意はありません。「口座の残高不足に気づかなかった」「引き落とし日を勘違いしていた」「たまたま出張で振り込みに行けなかった」という単なるミスがほとんどです。管理会社から電話を一本入れるだけで、「あっ、すみません!今日すぐに振り込みます!」とすぐに回収できる最も解決が容易なフェーズです。しかし、実はこの「数日の遅れ」を毎月のように繰り返す入居者は、家計の資金繰りがギリギリ(カツカツ)であることを示しており、のちの重度滞納の予備軍でもあります。
? 第2段階「理由づけ・逃避期」(滞納2週間〜1ヶ月)
連絡をしても電話に出なくなり、ようやく繋がっても「給料の支払いが遅れていて…」「来週には必ず払います」といった言い訳が始まります。この段階になると、入居者の手元には本当に「家賃を払うだけの現金」がなくなっています。生活費や他の消費者金融への返済を優先し、ペナルティがすぐには来ない「家賃」を後回しにし始めている状態です。ここで厳しい督促(プレッシャー)をかけないと、彼らの中で「大家への支払いは後回しでも大丈夫だ」という認識が固定化されてしまいます。
? 第3段階「完全な支払い不能・居座り期」(滞納2ヶ月〜3ヶ月以上)
不動産業界において、【滞納が3ヶ月(家賃3ヶ月分)を超えたら、全額回収はほぼ不可能(手遅れ)】という絶対的な法則があります。
家賃が月7万円だとして、3ヶ月分滞納すれば合計21万円です。毎月の家賃すら払えないほど生活が困窮している人間が、「来月、今月分の家賃と未払い分21万円を合わせて、一括で28万円払います」などという逆転劇を起こせるはずがありません。彼らはもう電話にも一切出ず、居留守を使い、ただ無言で部屋に引きこもるか、あるいは荷物を置いたまま夜逃げ(行方不明)するかの二択に陥ります。この段階まで放置してしまった大家は、家賃の回収を諦め、彼らを「合法的に部屋から追い出す(強制執行)」という、最もお金と時間がかかる法的手続きに移行せざるを得なくなります。
やってはいけない対応
滞納が数ヶ月続き、あなたはローン返済のために自腹を切り続けています。怒りで頭が沸騰し、「他人の家にタダで住み着きやがって!今すぐ叩き出してやる!」と思う気持ちは痛いほど分かります。しかし、ここで日本の「借地借家法」という強烈な入居者保護の壁が立ち塞がります。
日本国内において、法的な手続き(裁判による強制執行)を経ずに、大家が自分の力で実力行使に出て入居者を追い出す行為は『自力救済(じりききゅうさい)の禁止』という原則に触れ、完全な違法行為(犯罪)となります。どんなに相手が家賃を払っていなくても、以下のような行動をとった瞬間、大家であるあなたが「加害者」へ転落します。
絶対NG?:勝手に部屋の鍵を交換する
「家賃を払わないなら部屋に入らせない」。最もやりがちな実力行使ですが、これは刑法上の「住居侵入罪」や「器物損壊罪」に問われる可能性が極めて高い行為です。たとえ大家の持ち物であっても、契約期間中に賃借人が占有している部屋の鍵を無断で変えることは、明白な違法行為として過去の裁判でも大家側に数百万円の損害賠償命令が下されています。
絶対NG?:部屋に侵入して荷物を運び出す(捨てる)
「いつまでも居座るなら、荷物を全部外に放り出してやる!」。これも絶対にやってはいけません。部屋のテレビや服は「入居者の所有物(財産)」です。大家が勝手に他人の財産を捨てたり持ち出したりすれば、「窃盗罪」や不法行為による損害賠償請求の対象となります。たとえ夜逃げをして部屋がもぬけの殻に見えても、法的な手続きを踏むまでは中の荷物には指一本触れてはいけないのです。
絶対NG?:ドアに「家賃を払え」と張り紙をする
連絡が取れないからといって、隣の住人や通行人に丸見えの状態で玄関ドアに「〇号室の方、滞納家賃を急いで払ってください」といった張り紙をバンバン貼る行為。ドラマなどで見かけますが、これは「名誉毀損罪」や「プライバシーの侵害」に該当します。入居者から精神的苦痛を受けたとして訴えられれば、むしろ慰謝料を支払わされる羽目になります。早朝や深夜の訪問、大声での取り立て、恐喝まがいの電話なども全て違法な取り立て行為として罰せられます。
「相手がルール(契約)を破っているのに、なぜこっちが罰せられるんだ!」と理不尽に思うでしょうが、それが日本の法律の現実です。感情を爆発させた瞬間に敗北が確定します。滞納には必ず「冷徹な法的手続き」で戦わなければならないのです。
正しい対応手順
違法な実力行使ができない以上、私たちは法律が定めたレール(手順)に乗って、粛々と相手を追い詰めていくしかありません。滞納が発生した当日から退去(強制執行)に至るまでの、プロの管理会社が実行している「正しい5つのフェーズ」を解説します。
ステップ?:電話・SMSでの初期督促(滞納3日〜1週間)
滞納が確認されたら、一刻も早く連絡を取ります。「忘れているだけ」の層を取りこぼさないためです。電話、SMS、Eメールなどを使い、「◯月分の引き落としが確認できませんでした。◯日までに指定の口座にお振り込みをお願いします」と、あくまで丁寧なトーンで事務的に伝えます。(※通常、これらの業務はあなたが毎月手数料を払っている管理会社が代行してくれます)。
ステップ?:連帯保証人への連絡と訪問(滞納2週間〜1ヶ月)
本人と連絡がつかない、あるいは約束の期日を破った場合、契約時に設定した「連帯保証人(親や兄弟)」に直ちに連絡を入れます。連帯保証人は本人と全く同じ支払い義務を負っているため、「息子さんの家賃が遅れています。代わりに◯万円お支払いください」と堂々と請求できます。親に知られることを恐れて、ここで慌てて払ってくるケースも多々あります。また、この段階で管理会社の担当者が直接物件を訪問し、電気メーターが回っているか、ポストに郵便物が溢れていないか(すでに夜逃げしていないか)の「生存確認(居住確認)」を行います。
ステップ?:内容証明郵便による「契約解除の予告」(滞納2ヶ月)
滞納が2ヶ月を超え、いよいよ悪質だと判断した場合、裁判を見据えた法的な武器を抜きます。それが「配達証明付き内容証明郵便」の送付です。
これは、「いつ、誰が、誰宛てに、どんな内容の手紙を出したか」を郵便局(国)が公的に証明してくれる強力なアイテムです。文面には「本書面到達後、◯日以内に未払い家賃◯万円を指定口座へ振り込むこと。もし期日までに支払いがない場合は、本通知をもって賃貸借契約を解除(クビに)する」という最後通牒を突きつけます。この公的なプレッシャーにより、慌ててお金を工面してくるケースもありますし、今後の裁判での「大家はきちんと督促と契約解除の通知をした」という決定的な証拠となります。
ステップ?:建物明け渡し請求訴訟(滞納3ヶ月)
滞納が3ヶ月分(日本の法律上、契約解除に必要な『大家と借主の信頼関係が破壊された』と認められる目安の期間)に達し、内容証明も無視された場合、いよいよ弁護士に依頼して裁判所へ「建物明け渡し請求訴訟」を提訴します。
相手は家賃を払っていないという絶対??事実があるため、裁判自体は99%大家側が勝訴(出て行けという判決)します。ただし、訴訟費用(弁護士費用など)として数十万円の現金が飛び、判決が出るまでに数ヶ月の膨大な時間を浪費させられます。
ステップ?:強制執行(滞納半年〜)
裁判で「出て行け」という判決(債務名義)が出ても、相手が居座っている場合は、最終兵器である「強制執行」を裁判所の執行官に申し立てます。執行官と鍵屋、運送業者が部屋に踏み込み、法律の力で強制的に中の荷物を全て運び出し、鍵を取り替えて、ようやく部屋が大家の手に戻ってきます。
しかし、この運送費や荷物の保管費用(数十万円〜百万円以上)も、本来は入居者負担ですが、現実にはお金がないため「大家が全額立て替える(事実上の泣き寝入り)」ことになります。滞納から強制執行で部屋を取り返して次の募集に出せるまで、おおよそ「半年〜1年」の月日と「100万円近い現金(弁護士費用+執行費用+その間の空室損害)」という甚大なダメージを負うのです。
予防方法
ここまで読んで、あなたは絶望したかもしれません。「日本の法律はおかしい!大家はただ損をするだけじゃないか!不動産投資なんて怖くてできない!」。
安心してください。この「理不尽な滞納と裁判による数百万円の損失リスク」を、たった一つの手段で【完全にゼロ(0%)】にする究極の防衛策が存在します。
最強の盾「家賃保証会社」を100%必須にする
現代の不動産投資において、家賃滞納リスクを消し去るための絶対的な原則。それは、「個人の連帯保証人(親や兄弟)は一切信用せず、必ず『家賃保証会社』への加入を入居の絶対条件(必須)にすること」です。
家賃保証会社とは、入居者が加入し(保証委託料を払い)、万が一入居者が家賃を滞納した場合に、大家に対して「入居者の代わりに家賃を全額立て替えて支払ってくれる(代位弁済してれる)」という、大家にとっての神様のような金融機関です。
保証会社を利用する絶大なメリットは以下の3点に集約されます。
? 滞納されても、あなたの口座には毎月必ず家賃が100%振り込まれる(キャッシュフローが絶対に途切れない)。
? 入居者への嫌な電話督促や法的手続きは、全て保証会社の専門部隊が代わりにやってくれる(大家は何もせず見ているだけでいい)。
? 万が一裁判(強制執行)になった際の弁護士費用、強制執行費用、残置物の撤去費用まで、すべて保証会社の金でカバーされる(大家の手出しゼロ)。
「親がしっかりしているから」「公務員だから」といった理由で保証会社を外してはいけません。親が死んだり、本人が鬱病で休職した瞬間にリスクが顕在化します。入居時の審査において、保証会社の厳しい審査(ブラックリスト照会など)を通った人間だけを合格(入居可)とし、保証会社の盾を構えた状態で経営を行うこと。
この「保証会社必須ルール」を徹底するだけで、あなたは先ほど挙げたような「家賃滞納による黒字倒産」や「自力救済トラブル」「裁判での数百万円の持ち出し」という泥沼の恐怖から【完全に解放】され、ただ毎月の入金を確認するだけの、真の「不労所得」を手に入れることができるのです。
まとめ
家賃滞納は、「お金がないかわいそうな入居者」と「金持ちの大家」の温情物語ではありません。あなたのローン返済(人生)を脅かす、極めて血生臭い「債権回収ビジネス」の現場です。
「数日の遅れ」を許せば、それは数ヶ月の滞納へと悪化し、やがて回収不能の不良債権へと化けます。そこで感情的になり、勝手に鍵を替えたり怒鳴り込んだりするような素人大家(自力救済)は、入居者保護という日本の法律の逆鱗に触れ、犯罪者として社会的に抹殺されてしまいます。
正しい対応は、電話督促から始まり、内容証明、明け渡し訴訟、そして強制執行という法律のレールに沿って冷徹に作業を進めることです。
しかし、それ以上に重要なプロの戦略は、「そもそも滞納が起こる余地をなくす(ノーリスク化する)」ことです。その絶対的な解が「家賃保証会社への100%加入義務付け」です。
保証会社という強力なシステム(盾)に手数料(入居者負担)を払ってリスクを完全に丸投げすること。これこそが、何千万という借金を抱えながらも夜ぐっすりと眠り、安全に不動産という巨大な船を操縦し続けるための、現代のオーナーに必須の航海術なのです。