不動産投資は本当に節税になる?仕組みを解説
「不動産投資を始めれば、所得税や住民税が劇的に安くなりますよ」。不動産会社の営業マンが、高年収のサラリーマンや勤務医に近づく際に必ずと言っていいほど使う、不動産投資の【最大のキラーフレーズ】です。
確かに、不動産投資には税金をコントロールする強力な機能が備わっています。しかし、その甘い言葉の裏側に潜む「節税の本当のメカニズム(カラクリ)」と「将来のリスク」を正確に理解せずに、言われるがままにマンションを買ってしまうと、数年後には節税どころか「キャッシュ(手元の現金)が完全に枯渇する」という身の毛もよだつような地獄(黒字倒産)に突き落とされます。
そもそも税金とは、国が定めた厳格なルールの下で計算されるものです。何の根拠もなしに税金が安くなる魔法の杖など存在しません。不動産投資において「税金が減る」という現象は、明確な会計上のルールに基づく「ある特殊な計算(赤字の垂れ流し)」を利用した、合法的なテクニックに過ぎないのです。
本記事では、約の徹底解説を通じて、営業マンが絶対に深く語りたがらない「不動産投資の節税の原理(損益通算とは何か)」を、小学生でも分かるレベルまで噛み砕いて解説します。そして、その節税ロジックの心臓部であり、最強の合法的な魔法とも言える『減価償却費』の恐ろしいほどの効果と、あなたの【本業の年収別】にどれだけのリアルな節税額(還付金)が発生するのかを具体的な数字でシミュレーションします。
さらに最後には、この節税スキームが賞味期限を迎えた後に襲いかかってくる「デッドクロス(税金の逆襲)」という致命的な注意点と、その回避方法を包み隠さず公開します。この記事を読めば、あなたはもう二度と「節税になりますよ」という浅い営業トークに騙されることはなくなり、税のコントロールを自らの手で正確に操る「真の不動産投資家」への道を歩み始めることができるでしょう。
節税の原理
不動産投資によってなぜ本業(サラリーマンや医師)の税金が安くなるのか。その全ての秘密は、日本の税制における「損益通算(そんえきつうさん)」という強力なルールに隠されています。
サラリーマンの税金が決まる仕組み
通常、会社員や公務員の税金(所得税や住民税)は、会社から受け取る「給与所得」の金額をベースに計算されます。年収が高ければ高いほど、税率が階段状に高くなっていく「累進課税制度」が採用されており、高年収の人ほど、稼いだお金の多く(最大で約半分)を税金としてピンハネされる苦しい構造になっています。
「損益通算」という合法的な税金バスター
ここで、あなたが不動産投資(アパート経営など)を始めたとします。不動産投資から得られる家賃収入から、必要経費(管理費、修繕費、固定資産税、ローンの利息など)を引いた利益(または赤字)のことを「不動産所得」と呼びます。
日本という国は、特定の副業(不動産所得や事業所得など)において【赤字】が出た場合、その赤字を「本業の給与所得(黒字)から差し引いて良い(相殺して良い)」というルールを定めています。これが「損益通算」です。
【節税の超基本シミュレーション】
例えば、あなたの本業の給与所得が「1,000万円」だったとします。本来なら、この1,000万円に対して多額の所得税がかかります。
しかし、あなたが始めた不動産投資で、初年度に「不動産所得が300万円の【赤字】」になったと申告します。すると税務署は、給与の1,000万円から不動産の赤字300万円を引き算(損益通算)し、「今年のあなたの本当の所得は【700万円】ですね。では、税金は700万円をベースに再計算します」と判定してくれます。
すでに会社からは「1,000万円分の高い税金」が天引き(源泉徴収)されているため、確定申告を行うことで、「税金を払いすぎていましたね」ということで、春先に数十万円というまとまった【還付金(現金)】があなたの口座にドカッと戻ってきます。さらに翌年からの「住民税」も、700万円をベースに計算されるため劇的に安くなります。
つまり、不動産投資の節税とは「帳簿上の【赤字】を意図的に作り出し、本業の高すぎる所得を圧縮して、払いすぎた税金を取り戻すゲーム」なのです。
減価償却の効果
ここで鋭い人なら、一つの大きな矛盾に気がつくはずです。
「節税するために、不動産投資でわざと【赤字】を出す? それって、結果的に自分の手出し(手元の現金)が減っているのだから、税金が安くなってもトータルで損しているだけじゃないか!」と。
おっしゃる通りです。もしその赤字が「自分の財布から出ていったリアルなお金(現金)」によるものであれば、ただの資産の流出であり、節税する意味が全くありません。
しかし、不動産投資には、「自分の財布からは1円もお金が出ていないのに、帳簿上(確定申告書の上)だけで莫大な【経費(つまり赤字の素)】を計上できる」という、チート級の合法的な魔法のアイテムが存在します。それこそが、最強の節税装置である『減価償却費(げんかしょうきゃくひ)』です。
減価償却費という「見えない経費」
あなたが3,000万円で一棟アパート(建物部分2,000万円、土地部分1,000万円)を購入したとします。(※土地は年数が経っても劣化しないため、減価償却の対象になりません。計算できるのは「建物と設備」だけです)。
税務署は、「2,000万円の建物を買ったからといって、購入したその年に全額(2,000万円)を経費として計上してはいけません。建物は何十年も使えるものなのだから、国の定めた寿命(法定耐用年数)に応じて、毎年少しずつ分割して経費にしなさい」というルールを定めています。
例えば、木造アパートの法定耐用年数は「22年」です。2,000万円の建物を22年で分割すると、およそ「毎年約90万円」となります。
重要なのはここからです。この「毎年90万円」という経費(減価償却費)は、あなたから誰かに対して支払われているお金ではありません。 購入時にローンを組んで買っている場合など、あなた自身の今年の財布からは1円もキャッシュダウンしていないにも関わらず、確定申告書の上では「90万円も経費が掛かりました!(だから不動産事業は赤字です!)」と堂々と主張することができるのです。
「築古木造アパート」がサラリーマンを熱狂させる理由
さらに、この減価償却の効果を最大限(暴力的とも言えるレベル)まで引き上げる裏技が、「法定耐用年数(22年)を超えた、古い木造アパート(築古木造)」を購入することです。
税法上、すでに寿命(22年)を超えてしまっている古い木造物件を購入した場合、建物の価値は「たったの4年」で全額を経費として償却して良いという特例ルール(簡便法)が存在します。
仮に「建物価格が2,000万円の築古アパート」を買うと、2,000万円をたった4年間で分割償却できるため、「毎年500万円」という超巨大な額の見えない経費(減価償却費)を叩き出すことができます。
本業の年収が1,500万円ある人が、この築古木造アパートを買い、不動産からの家賃収入を他の経費でトントンにできれば、マイナス500万円の減価償却費がそのまま「不動産の赤字」として本業の所得(1500万)と相殺(損益通算)され、所得が1,000万円へと一気に圧縮されます。結果として「年間で150万円近いの税金が戻ってくる(還付・減額される)」という、凄まじい節税効果が、たった4年という超短期間に集中して発生するのです。これが、高属性サラリーマンが築古木造アパートに目の色を変えて群がる「減価償却を使った強力な節税」の本当のカラクリです。
年収別効果
減価償却費による損益通算(赤字の相殺)の威力が分かったところで、では具体的に「自分(あなた)の今の年収で、一体いくらの節税効果があるのか?」という最も気になるリアルな数字を、年収のレイヤー別(本業の給与収入別)にシミュレーションしてみましょう。税率の階段(累進課税)をどう下がるかがポイントです。
? 年収500万円〜700万円の層(節税効果:極小〜小)
一般的な平均年収層であるこのゾーンでは、結論から言うと「不動産投資による節税効果を真っ先に狙うべきではありません」。
この年収帯の人の所得税率は5%〜10%程度(住民税と合わせても15%〜20%)しかありません。
例えば、減価償却を駆使して不動産で「100万円の帳簿上の赤字」を作ったとしても、戻ってくる税金(還付される金額)は「100万円 × 15%〜20% = 年間15万円〜20万円」程度に過ぎません。これでは、物件を購入する際にかかった諸費用(登記費用や不動産取得税などの数百万円)を回収するだけでも何年もかかってしまい、もし空室や修繕トラブルが起きた場合、あっという間に持ち出し(リアルな赤字)に転落します。この年収帯の方は、節税ではなく「単純に稼ぐこと(家賃収入のプラスのキャッシュフロー)」だけを目的に利回り重視の投資を行うべきです。
? 年収900万円〜1,200万円の層(節税効果:中〜大)
この層が、不動産投資(特に新築ワンルームマンションや築浅アパート)の営業マンから最も集中的にターゲットにされる「カモ」であり、かつ「節税の旨味が出始める」境界線のゾーンです。
年収900万円を超えると、所得税の税率が一気に跳ね上がり、住民税と合わせて「約33%〜43%」という重い税負担がのしかかってきます。この層が先ほどの「100万円の赤字」を作ると、「100万円 × 33% = 年間33万円」もの税金が戻ってきます。
しかし、悪徳業者はこの還付金(33万円)をエクセルのシミュレーションの「収入」のように組み込み、「毎月のローンの赤字(リアルな手出しが年間30万円)があっても、確定申告で税金が戻ってくるから、最終的な収支はプラスですよね!」という危険なセールストークを展開します。税金を取り戻すために実弾(現金)を失うような、本末転倒な投資に騙されやすい最も危険なレイヤーです。
? 年収1,500万〜2,000万円以上の層(節税効果:特大・必須)
外資系金融マンや経営者、勤務医など、日本の税制で最も搾取されている超高所得者層です。所得税と住民税を合わせた最高税率は「約50%〜55%」にも達し、稼いだお金の半分以上が国に没収されています。
この層にとっては、不動産投資(特に築古木造アパートを活用した超・短期間の減価償却節税)は、資産防衛のための「必須の武器」となります。
前述のように、建物の減価償却で「年間500万円の赤字」を作り出せれば、「500万円 × 50% = 年間250万円」という莫大な税金が手元に現金として戻ってきます。彼らはこの戻ってきた数百万の現金を生活費で散財するのではなく、「次の物件を買うための頭金」として再投下し、さらに事業規模を拡大していくという、完全に別の次元のマネーゲームを展開しているのです。
注意点
ここまで読むと、「減価償却ってすごい!私も築古木造アパートを買ってガンガン節税するぞ!」と思うかもしれませんが、少し待ってください。
不動産投資の節税には、知らないと確実に自己破産に直結する、あまりにも恐ろしいカウンターパンチ(しっぺ返し)が用意されています。
? 魔法が解ける日「デッドクロス」の恐怖
築古木造アパートの「4年という超短期間の強力な減価償却」。これには決定的な裏があります。それは、「4年経ったら、経費(減価償却費)が一切ゼロになる」ということです。
5年目に入った瞬間、帳簿から「毎年500万円の経費」が忽然と消え去ります。しかし家賃収入は今まで通り入ってきます。すると、確定申告書の不動産の欄は「突然、莫大な【黒字】」に転落(実際は正常化)します。
不動産が黒字になれば、損益通算(赤字との相殺)ができないどころか、「本業の給与所得(1,000万円) + 不動産の黒字(500万円) = 今年のあなたの所得は1,500万円ですね。去年より税金を倍増させます!」と、税務署からの強烈な「税金の逆襲」が始まります。
さらに恐ろしいことに、この頃には銀行への毎月の「ローン元本の返済額」は全く減っていません。帳簿上は黒字で税金は跳ね上がったのに、払わなければいけない現金(税金+ローン返済)の額が手元の家賃収入をオーバーし、「黒字なのに通帳のお金が枯渇して倒産する」という恐怖の現象が起きます。これを不動産投資の専門用語で「デッドクロス(死の交差)」と呼びます。減価償却という魔法の薬は、効果が切れた後に強烈な副作用(税金の支払い)を伴う、単なる「税金の先送り(繰り延べ)」に過ぎないのです。
? 「売却時の税金(譲渡所得税)」のリスク
「デッドクロスになる前に(4年目で)サクッと物件を売ってしまえばいいじゃないか」。そう考えたあなたは賢いですが、国はそこまで甘くありません。
不動産を売却した際に出た利益(キャピタルゲイン)に対しては、「譲渡所得税」という重い税金がかかります。しかもこの計算のベースとなる「建物の価値」は、「減価償却をした分だけ価値が減った(ゼロになった)」とみなされます。
つまり、3,000万円で買ったアパートを、5年後に同じ3,000万円で売却できたとしても、建物の価値(簿価)がすでに償却によってゼロになっているため、税務署からは「建物を0円で仕入れて、数千万円の価値で売って大儲けしたね」と判定され、売却価格に対して【約20%〜39%もの莫大な譲渡税】を現金で一括納付させられてしまうのです。
まとめ
不動産投資における「節税」という言葉の正体、それは決して魔法ではありません。帳簿上に見えない経費(減価償却費)を叩き出して意図的な「赤字」を作り、損益通算というルールを使ってサラリーマンの給与から天引きされた税金を合法的に取り戻す(還付させる)という、極めてテクニカルな「会計操作」のことです。
特に年収900万円を超える高所得者にとって、築古物件を使った減価償却の威力は凄まじく、年間数百万円の税金奪還を可能にする強力な武器となります。しかし、それは「未来に払うべき税金を、強引に今に持ってきただけ(先送り)」という劇薬であることを決して忘れてはいけません。
減価償却の期間が切れた途端に襲いかかる「デッドクロス(税金の逆襲と黒字倒産の危機)」、そして売却時に牙を剥く「譲渡所得税」。これら出口戦略における税金の支払いを計算に入れず、目先の「数十万円の還付金」ほしさに、毎月のキャッシュフローが赤字になるようなクズ物件をフルローンで買ってしまうことほど、愚かで危険な行為はありません。
「節税のために不動産を買う」のではなく、「利益(キャッシュフロー)が出る優良物件を買った上で、そのルール(減価償却)を熟知し、税引き後の現金(真の利益)を最大化する手段として節税を活用する」。この順番を決して間違えないこと。これが、不動産業者の甘い罠から身を守り、投資家として生き残るための絶対不可侵の鉄則なのです。