不動産投資ローンの審査基準|銀行が見るポイント

不動産投資の世界において、「融資(ローン)を引けるかどうか」は、投資のスタート地点に立てるかどうかを決定づける最も高いハードルです。どれほど素晴らしい高利回りの物件を見つけても、どれほど緻密な経営計画を立てても、金融機関から「あなたにはお金を貸せません」と審査で否決されてしまえば、その投資計画は完全に幻に終わります。

住宅ローンであれば、年収制限さえクリアしていれば比較的スムーズに審査が通る傾向にあります。しかし、不動産投資ローン(事業用ローン・アパートローン)の審査は、住宅ローンとは全く異なる厳格な基準で行われます。なぜなら、銀行等がお金を貸す対象は「あなたの生活基盤」ではなく、「あなたがこれから始める不動産賃貸事業の採算性」と「経営者としての資質」だからです。

「一体、銀行は裏で何を調べているのか?」「なぜ同じ年収なのに、あの人は何億円も借りられて、自分は1部屋も買えないのか?」。不動産投資ローンの審査基準は、長らく金融機関のブラックボックスとされてきました。しかし、何千件もの融資案件を通してきた不動産プロフェッショナルの視点から見れば、銀行の審査基準には明確な「絶対方程式」が存在します。本記事では、約の徹底解説を通じて、金融機関が融資審査において最も重視する3つの柱(属性・物件・収支)から、審査に通る人と落ちる人の決定的な違い、そして一発で審査を通すための実践的なコツまでを余すところなく解き明かします。この審査の裏側を知ることで、あなたは融資に愛される「優良顧客」へと劇的な進化を遂げることができるでしょう。

銀行は何を見ているのか

金融機関の融資担当者(ローンセンターや支店の担当者)があなたの融資申込書を受け取った時、彼らが最初に、そして最も厳しくチェックするのは大きく分けて以下の3つのポイントです。この3つのうち、どれか1つでも致命的な欠陥があれば、審査のテーブルに乗ることすらできません。

「属性」:あなた自身の信用力と返済能力

銀行が最も手っ取り早く、かつ客観的に「借主の信用」を測る指標が「属性(ぞくせい)」です。属性とは、あなたという人間の経済的な社会的ステータスのことです。具体的には、年齢、年収、勤務先の規模、勤続年数、雇用形態、家族構成、現在の借入状況(住宅ローンや車のローン等)、そして過去の信用情報(クレジットカードの支払い遅延がないか等)がこれに該当します。

不動産投資ローンは金額が数千万円から場合によっては数億円と非常に巨額になります。銀行は「この人は万が一、不動産からの家賃収入が途絶えた場合でも、本業の給料からローンを滞りなく返済(補填)できる能力があるか?」というワーストシナリオを常に想定しています。そのため、事業の成功確率よりも手前に、まずは「個人としての強固な返済能力=高い属性」を求めるのです。

「物件」:担保価値と流動性

次に銀行が見るのは、「あなたが買おうとしている物件そのものの価値」です。融資を行う際、銀行は購入する物件に対して「抵当権(ていとうけん)」を設定します。これは、万が一あなたがローンを返せなくなった場合に、銀行がその物件を差し押さえて競売等で売却し、貸したお金を強制的に回収するための権利です。

したがって銀行は、「この物件は、貸すお金(融資額)に見合うだけの資産価値があるか?(担保評価)」「いざという時に、すぐに買い手が見つかる物件か?(流動性)」を厳しく審査します。どんなに利回りが高いお宝物件であっても、それが山奥の違法建築アパートであれば、銀行からの担保評価はゼロ(融資不可)となります。融資が出やすいのは、法律(建築基準法など)を遵守しており、土地の価値が高く、将来にわたって資産価値が目減りしにくい物件(鉄筋コンクリート造のマンションなど)です。

「収支」:事業としての採算性とストレス耐性

そして最後に、不動産賃貸「事業」としての採算性を審査します。これが住宅ローン審査との最大の違いです。銀行の審査部には、独自の厳しい「ストレステスト基準」が存在します。

あなたが提出した「満室を想定したバラ色の利回り計算書」を、銀行は決してそのまま信じません。「空室率が20%〜30%になったらどうなるか」「現在の金利が1%〜2%上昇したら返済はどうなるか」「築年数が経過して家賃が10%下落したら持ちこたえられるか」。銀行はあえて厳しい負荷(ストレス)をかけた最悪のシミュレーションを行い、それでも毎月のローン返済が滞らない(キャッシュフローがマイナスにならない)と判断した場合にのみ、融資の決裁を下します。

年収と勤務先の影響

3つの柱の中でも、個人の投資家にとって最もコントロールが難しく、かつ審査基準の根幹をなすのが「年収と勤務先(いわゆる属性)」です。ここでは、具体的にどのような属性が金融機関から高く評価されるのかを解説します。

絶対的な「年収」の壁:500万円と700万円のライン

不動産投資ローンの世界には、暗黙の了解として存在する「年収の壁」があります。

まず最低限のラインとして立ちはだかるのが「年収500万円」の壁です。多くの大手銀行やオリックス銀行などの有力な投資用ローン専門金融機関は、申し込みの最低条件(足切りライン)を「前年度の源泉徴収票の支払金額が500万円以上」に設定しています。これに1円でも満たない場合、どんなに良い物件であっても自動的に審査の土俵から弾かれます(区分マンションの提携ローンなど一部例外はあります)。

さらに、より好条件(低金利・長期間・高額)で融資を引くための「プラチナライン」となるのが「年収700万円〜800万円」以上の層です。この年収帯になると、生活費を差し引いても十分な返済余力(可処分所得)があると見なされ、金融機関の態度が劇的に軟化します。「医師、弁護士、公認会計士」といった絶対的な高収入国家資格保持者や、「年収1,500万円以上の外資系企業社員」などは、銀行側から「ぜひうちでお金を借りて不動産を買ってください」と営業がかかるスーパーVIP待遇となります。

勤務先の「規模」と「勤続年数」が与える圧倒的信頼感

しかし、単に年収が高いだけでは不十分です。「その年収が、どんな企業から支払われているのか」という【勤務先の規模】が、時には年収以上に強烈な影響力を持ちます。

銀行が最も好むのは、「国や地方自治体(公務員)」、次に「東証プライム(旧東証一部)上場企業」、そして「資本金が数十億円クラスの非上場の大企業」や「インフラ系企業(電力・ガス・鉄道など)」です。これらの組織に属している従業員は、「会社が倒産するリスクが極めて低く、将来にわたって給与が右肩上がりで安定して支払われる可能性が高い」と評価されます。極端な話、年収1,000万円の中小企業の社長(自営業)よりも、年収600万円の地方公務員の方が、銀行の融資評価(属性スコア)は圧倒的に高くなります。

また、「勤続年数」も重要な指標です。どんなに大企業であっても、転職して半年しか経っていなければ「すぐに辞めてしまうかもしれない(収入が途絶えるリスクがある)」と見なされ、審査のハードルが撥ね上がります。一般的に、不動産投資ローンの審査のテーブルに乗るには「同じ会社・同じ組織で最低でも足掛け3年以上の勤続実績」が求められるのがセオリーです。

金融資産の重要性

年収や勤務先といった「収入(フロー)の属性」と同じくらい、近年金融機関が異常なまでに重視するようになっているのが、「現在保有している金融資産(ストックの属性)」です。

「頭金」以上の強力な武器となる預金残高

過去の不動産投資ブームの時代は、「年収さえ高ければ、貯金がゼロ(自己資金ゼロ)でも数億円のフルローンが引ける」という異常な状態が横行していました。しかし、現在では審査が厳格化され、銀行は「あなたの通帳の残高」を穴の開くほどチェックします。

銀行はこう考えます。「この人は年収800万円で大企業に勤めている素晴らしい属性だが、貯金が100万円しかない。ということは、稼いだお金をすべて浪費してしまう浪費家であり、金銭管理能力(マネーリテラシー)が決定的に欠如している。こんな人に何千万円もの事業用資金を貸すのは危険すぎる」と。逆に、年収が500万円であっても、コツコツと節約して「現金1,000万円」を貯め込んでいる人に対しては、「この人は自己規律があり、経営者としての資質が極めて高い。万が一物件で赤字が出ても、この真面目な性格と貯蓄で必ず返済をしてくれるだろう」と最大限の評価を下します。

「金融資産の多さ=融資額の限界突破枠」

金融資産は、単に「物件を買うための頭金(2割や3割)」として使われるわけではありません。手元に現金や換金性の高い有価証券(株式や投資信託など)を豊富に持っていることは、銀行の内部審査において「この人は万が一の事態が起きても、絶対に自己破産せずに借金を返せる強靭なディフェンス力を持っている」という最大級の担保になります。

例えば「物件価格の10%〜20%に相当する金融資産を(頭金として払わずに)手元に残したまま見せること」ができれば、銀行からフルローン(物件価格の100%融資)を引き出せる確率が劇的に高まります。金融資産の額は、あなたの「返済の確実性」を裏付ける最強の証明書なのです。(※仮想通貨などボラティリティの激しい資産は、銀行からの評価対象外となることがほとんどです)

通る人と落ちる人の違い

年収も勤務先もほぼ同じ属性なのに、なぜAさんは審査に通り、Bさんは審査に落ちるのか。審査の合否を決定づける「見落としがちな決定的な違い」について解説します。

個人の信用情報(クレヒス)の傷

属性がいくら良くても「一発で審査落ち」となる最悪の爆弾が、「個人の信用情報(クレジットヒストリー)」に傷がついているケースです。

クレジットカードの支払いを過去に数ヶ月滞納したことがある、携帯電話の本体分割払いを引き落とし日に落とせなかったことがある、過去に自己破産や債務整理の履歴がある。これらの情報は「CIC」や「JICC」といった個人信用情報機関に5年〜10年間、確実に記録・共有されています。銀行は融資審査の際に必ずこの信用情報機関に照会をかけます。そこに「異動(長期間の延滞などを意味するブラックマーク)」の文字があった瞬間、その融資は担当者の稟議書が書かれることもなく、問答無用で否決されます。「たかがスマホの割賦代金数百円の引き落とし忘れ」が、数千万円の不動産投資を完全に破壊するのです。

既存の「見えない借金」による与信枠の圧迫

銀行は融資を行う際、あなたの年収に対して「年間いくらまでならローンの返済に回せるか」という上限枠(返済比率)を厳しく計算します。この時、最も厄介なのが「既存の借入」の存在です。

わかりやすい例が「住宅ローン」です。既に年間150万円を住宅ローンの返済に充てている場合、銀行はその分あなたの返済余力(与信枠)が減っていると判断し、不動産投資に出せる融資額を大幅に減額、あるいはゼロ査定にします。同様に、車のマイカーローン、クレジットカードのリボ払い残高、さらには「使っていないキャッシング枠(枠があるだけで借金とみなされる過酷な審査基準の銀行もあります)」も、あなたの与信を激しく圧迫します。審査に通る人は、不動産投資を始める前に不要なクレジットカードを解約し、車のローンなどを一括で繰り上げ返済して「身ぎれいな状態(無借金)」を作ってから銀行の門を叩いているのです。

審査を通すコツ

最後に、不動産投資ローンの厳しい審査の壁を突破し、あなたが望む好条件の融資(低金利・長期間・高額)を勝ち取るための実践的で強力なコツをいくつかご紹介します。

「事業計画書」の作り込みで本気度を見せる

不動産投資は「事業(ビジネス)」です。銀行にお金を貸してほしいと頼む時、ただ不動産屋からもらった表面的な「満室想定の利回り表(ペラ1枚)」を提出するだけでは、担当者の心は全く動きません。

審査を確実に通す投資家は、自分でエクセルを叩き、「事業計画書」を徹底的に作り込みます。「なぜこのエリアを選んだのか(賃貸需要の根拠となる人口データや周辺施設の調査結果)」「もし空室が20%発生した場合、あるいは金利が1.5%上昇した場合のストレステスト(収支の悪化シミュレーション)と、それに耐えうる自分の貯蓄額の証明」「購入後5年間で予定している修繕箇所と、その見積もり額」。これらの「ワーストシナリオを事前に想定し、対策まで練り上げられた分厚い事業計画書」を提出するのです。

これを見た銀行の担当者は、「この人はただの利回り狙いの素人ではない。リスクを完全に掌握している優秀な経営者だ」と驚嘆します。この強力な信頼感こそが、担当者が上司(審査部)を説得するための最強の武器(稟議の材料)となり、ギリギリの審査ラインを突破する原動力となります。

「給与振込口座」や「メインバンク」との関係構築

そして、最も見落とされがちですが極めて有効なのが「日頃からの金融機関との関係構築(リレーションシップ)」です。

いきなり飛び込みで融資をお願いしに行っても、銀行からすれば「あなたはどこの誰ですか?」という状態です。しかし、あなたが新入社員の時から10年間ずっと「給与振込口座」として使っている銀行や、定期預金で数百万円を預けているメインバンクであれば話は別です。銀行のコンピューターには、毎月確実に数十万円の給与が振り込まれ、それが着実に貯蓄に回されているあなたの「10年分の堅実なクレジットヒストリー(素晴らしいお金の履歴書)」が蓄積されています。

こうした取引実績のある銀行(特に地元の地方銀行や信用金庫)に、「実は将来のために不動産賃貸業を始めたいのですが、長年お世話になっている御行にぜひ融資をお願いしたい」と相談を持ちかけるのです。銀行の支店長や渉外担当者は、既存の優良顧客からの事業融資相談を無下には扱えません(顧客流出を防ぐためでもあります)。親身になって相談に乗り、時には審査部に対して強いプッシュをしてくれる強力な味方(パートナー)へと変貌するのです。

まとめ

不動産投資ローンは、「物件」を買うための資金であると同時に、あなたという個人の「信用度」に対する成績表そのものです。

銀行は決して感情や勢いでお金を貸しません。「年収と勤務先の規模」という圧倒的な属性の壁、「現金という強靭な盾」の有無、そして「借入(クレヒス)のクリーンさ」を冷徹に数値化し、さらに物件の担保価値とストレスをかけた収支予測を組み合わせることで、融資の可否を機械的に判断しています。この審査の「方程式」を知らずに何度も融資の申し込みをして否決されれば、その「否決された履歴」自体が信用情報に残り、二度と融資が引けない体になってしまう危険性もあります。

不動産投資を志すのであれば、まずは自分の現在の「属性(点数)」を客観的に把握してください。そして、無駄な借金を一掃し、血の滲むような努力で現金を貯め、緻密な事業計画書を作成できるだけの不動産知識を身につけること。銀行から「あなたにぜひお金を貸させてください」と言われるだけの強固な「信用力」を磨き上げた時、不動産投資ローンの審査基準という最大の壁は、あなたの人生を飛躍させる最強のジャンプ台へと変わるはずです。


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