不動産投資で失敗しないエリアの選び方|人口データの読み方
結論から言うと、不動産投資の成功と失敗の分かれ道は「エリア選び」で8割が決定します。どんなに優れたリフォーム技術や管理ノウハウを持っていても、そもそも「そのエリアに住みたい」と思う人がいなければ、空室は永遠に埋まりません。
本記事では、なんとなくの感覚や土地勘ではなく、「人口データ」という客観的な数値を根拠にした【勝てるエリアの選び方】を、徹底的に解説します。絶対に手を出してはいけないNGエリアの特徴から、不況にも強い安定エリアの条件、そして初心者が最初の一歩を踏み出すのに最適なエリアタイプまで、網羅的にお伝えします。この記事を読み終える頃には、市区町村のデータを見るだけで「ここは買っても大丈夫なエリアか」を瞬時に判断できるプロの眼力が養われているはずです。
エリア選びが収益の8割を決める理由
家賃は立地で決まる
なぜ不動産投資において、これほどまでにエリア(立地)が重要視されるのでしょうか。それは、不動産という商品における最大の価値(価格・家賃)が、「その場所が持つ利便性」に直結しているからです。
アパートやマンションの「部屋の中(専有部分)」の価値は、年々古くなり、劣化していくため、放っておけば家賃は確実に下がっていきます。しかし、その建物が建っている「土地(立地)」の価値は、駅からの距離が変わらない限り、また周辺の生活利便施設が充実し続ける限り、そう簡単に下落することはありません。需要が高いエース級の立地であれば、築30年の古いアパートであっても新築並みの強気な家賃で貸し出すことが可能です。逆に、誰も住みたがらない不便なエリアに最新設備のデザイナーズマンションを建てても、いつまで経っても満室にはならず、家賃を相場以下に下げ続けるしかありません。入居者が毎月支払う家賃の正体とは、部屋の綺麗さに対する対価ではなく、「その場所に住むことで得られる通勤・通学・生活の時短効果(利便性)に対する対価」なのです。
建物は変えられるが立地は変えられない
不動産投資における「絶対的な真理」があります。それは、『建物はお金でどうにでも変えられるが、立地(エリア)だけはオーナーの力で1ミリも変えることができない』という事実です。
購入したアパートの間取りが古ければ、数百万かけてリノベーションすれば済みます。和室を洋室に変えたり、独立洗面台を新設したり、無料Wi-Fiを導入したりと、設備の追加による「後天的な価値の向上(バリューアップ)」はいくらでも可能です。しかし、「最寄り駅までの距離を徒歩20分から5分に縮めること」や、「アパートの目の前に大型スーパーや大学キャンパスを誘致すること」は、あなた個人の資金力や努力では絶対に不可能です。
どんなに腕の良い不動産投資家であっても、立地という「先天的なマイナス要素」を覆すことはできません。だからこそ、物件を購入する前(後戻りができる段階)に、そのエリアが持つポテンシャルと将来性を、何よりも慎重に、そして冷徹に分析し尽くさなければならないのです。
必ず見るべき3つの指標
「この街はなんとなく活気がある」「駅前が綺麗になったから良さそうだ」といった主観的な印象だけで数千万円の投資判断を下すのは、ギャンブルに過ぎません。プロの投資家は、市区町村のホームページや総務省が発表している「国勢調査(e-Stat)」などのオープンデータにアクセスし、以下の3つの客観的指標を必ずチェックします。
指標1:人口増減(エリアの純粋なパワー)
最も基本であり、最も重要なのが「人口動態(増え続けているか、減っているか)」です。日本の総人口は減少局面に突入していますが、実はミクロな視点(市区町村や町丁単位)で見ると、人口が増え続けているエリアと、急激に過疎化が進んでいるエリアへと凄まじい勢いで「二極化」が進行しています。
ターゲットとする市区町村のホームページを開き、「統計情報(人口・世帯数)」のページを確認してください。ここで見るべきは、直近1年間の増減ではなく「過去5年?10年間のトレンド(推移)」です。過去10年間で人口が維持されている、あるいは微増しているエリアであれば、賃貸需要のパイが底堅いことを意味します。逆に、毎年数パーセントのペースで人口が右肩下がりに減少しているエリアでは、パイ(入居希望者)の奪い合いとなり、必然的に空室率が悪化し、家賃の価格破壊(値下げ競争)が起きます。投資対象とするエリアは、最低ラインとして「人口減少率が県内(圏内)平均よりも緩やかな市町村」を選ぶのが絶対条件となります。
指標2:世帯数(真の賃貸需要)
人口増減以上に、賃貸経営に直結する重要なデータがあります。それが「世帯数の推移」です。実は日本全体でも、人口は減っているのに「世帯数だけは増えている」という現象が長年続いています。これは、核家族化の進行、未婚率の上昇、さらには高齢者の単独世帯(一人暮らし)の増加などに起因します。
アパートやマンションの部屋を借りるのは「1人の人間」というより「1つの世帯」です。例えば、4人家族がいれば必要な部屋(契約)は1つですが、その家族がバラバラに一人暮らしを始めれば、4つの部屋(契約)が必要になります。つまり、人口が多少減っていても、「世帯数が増加し続けているエリア」であれば、賃貸住宅に対する実質的な需要は高まっている(アパート経営が成り立つ)と判断できるのです。物件を購入する際は、そのエリアの世帯数が過去5年間でどのように推移しているかを必ずセットで確認してください。
指標3:年齢構成(ターゲットの明確化)
3つ目の指標が「年齢(年代)構成比」です。そのエリアにどんな世代(単身の若者か、子育てファミリーか、シニア層か)が多く住んでいるかを分析します。これも国勢調査のデータ(年齢別人口統計)から簡単に読み取ることができます。
20代?30代の若年層の割合が高いエリアであれば、ワンルームや1Kといった単身者向け物件の需要が底堅いことが証明されます。逆に、年齢構成のグラフが50代?70代に大きく偏っている(若者が流出している)エリアで、単身向けのワンルームアパートを新築・購入することは自殺行為に等しいと言えます。自分が買おうとしている物件の間取り(ワンルームなのか、ファミリー向けの3LDKなのか)と、そのエリアに実際に住んでいる人々の「ボリュームゾーン(主役の年齢層)」がピタリと一致しているかどうかが、空室を最速で埋めるための鍵となります。
NGエリアの特徴(近づいてはいけない危険地帯)
データ分析の基本を抑えた上で、ここからは具体的な「失敗しやすいNGエリア」の特徴を3つ挙げます。これらに該当するエリアの物件は、どんなに表面利回りが高くても(安く売られていても)、初心者は絶対に手を出してはなりません。
NG特徴1:新築の供給過多(アパート乱立エリア)
のどかな田園風景が広がる郊外エリアで、畑や農地だった場所が次々と切り売りされ、大手ハウスメーカーのピカピカな新築アパートが狂ったように乱立している地域を見かけたことはないでしょうか。このような「新築供給過多」のエリアは、投資家にとって最大の激戦区(レッドオーシャン)となります。
賃貸需要(住みたい人の数)は大きく増えていないのに、供給(アパートの部屋数)だけが爆発的に増え続ければ、需給バランスは一瞬で崩壊します。入居者は当然ながら「同じ家賃なら、設備が最新の新築」を選びます。すると、築10年?20年のアパート群は一気に空室を抱え、苦肉の策として「家賃の値下げ」と「過剰な広告料(AD2ヶ月、3ヶ月…)」のチキンレースに突入します。このようなエリアの築古物件を買ってしまうと、周りの新築の家賃下落スピードに巻き込まれ、想定していた利回りが数年で吹き飛んでしまいます。Googleマップの航空写真やストリートビューを見て、似たような新しいアパートが密集しているエリアは警戒レベルを最大限に引き上げてください。
NG特徴2:特定の「学生」への依存(単科大学の周辺)
「大学のすぐ目の前だから、学生が確実に入って利回りが高いよ」という営業トークに騙されてはいけません。大学など、学生の需要に100%依存しているエリアでの投資は、実は非常にハイリスクです。
特に危険なのは、キャンパスが1つしかない「単科大学」や、特定の学部の1・2年生だけが通うような郊外のキャンパス周辺です。少子化の影響を受け、現在多くの大学が「郊外のキャンパスから、交通の便が良い都心部のキャンパスへの移転・統合(都心回帰)」を進めています。もし、あなたが投資したアパートの目の前にある大学が「来年から県外キャンパスへ移転します」と発表した場合、どうなるでしょうか。翌年の春には学生が一斉に退去し、アパートは一瞬にして「全空(空室率100%)」の廃墟と化します。周辺に他の企業や商業施設がなければ、社会人の入居者を呼ぶこともできず、事業は完全に詰んでしまいます。学生需要を狙うのであれば、複数の大学が密集しているエリアや、社会人の需要も同時に見込めるターミナル駅周辺に限定すべきです。
NG特徴3:単一の「巨大企業」への依存(企業城下町)
学生街と同様に危険なのが、特定の巨大メーカーの工場や造船所など、ただ1つの企業の従業員需要だけで成り立っている「企業城下町」での投資です。
これらのエリアは、景気が良い時は工場の派遣社員や期間工の需要でアパートが満室になり、利回りも異常に高くなります。しかし、世界的な不況や企業の業績悪化によって「工場の閉鎖(撤退)」や「大規模なリストラ」が行われた瞬間、街から一気に人が消え去ります。また、企業側が福利厚生として巨大な社員寮を新設した場合も、周辺のアパートから民間需要が根こそぎ奪われることになります。自分の投資の命運(入居率)を、コントロール不可能な「一民間企業の経営方針」に完全に依存してしまう投資モデルは、プロの目からはあまりにも危うく映ります。
安定エリアの特徴(不況に強い鉄壁のディフェンス)
では逆に、どんな時代でも空室が埋まりやすく、長期的に安定した家賃収入を生み出し続ける「強いエリア」とはどのような場所でしょうか。それは一言で言えば「多様性(リスクの分散)が効いているエリア」です。
特徴1:交通の結節点(複数路線が乗り入れるターミナル)
圧倒的に強いのが「複数の鉄道路線が交差するターミナル駅(交通結節点)」です。例えばJR線に加えて私鉄や地下鉄が乗り入れている駅であれば、通勤や通学の目的地が東西南北に分散します。
入居者は「転職して勤務地が変わった」「学校のキャンパスが変わった」場合でも、交通アクセスの選択肢が多いターミナル駅であれば、そのまま同じアパートに住み続けてくれる(引越しを回避してくれる)確率が高まります(=退去率の低下)。また、様々な方面へのアクセスが良いため、特定の企業や学校に依存せず、あらゆる層(学生、新社会人、DINKSなど)から幅広く入居募集をかけることができるという最強の汎用性を持っています。
特徴2:病院・大学・オフィスが「混在」する街
NGエリアで「学生への一点依存は危険」と解説しましたが、これが「適度に混在している」場合は最高のエース立地となります。
駅の北口には中規模の大学キャンパスがあり学生の需要がある。南口には市役所や大型の総合病院、そして地元企業のオフィスビル群があり、看護師や公務員、若い会社員の社会人需要もある。さらに少し歩けば大型スーパーがあり、ファミリー層も住みやすい。こうした「需要のポートフォリオ(分散)」が形成されているバランスの良いエリアは、不況によって一つの産業がダメージを受けても、他の層の需要で十分にカバーすることができます。どのようなライフステージの人でも住みやすい「街の多様性」こそが、数十年先まで家賃を守り抜く最大の防壁となります。
特徴3:中長期的な「再開発」が予定されている
不動産(土地)の価値は、街が便利になればなるほど上昇します。各自治体のホームページ等で公開されている「都市計画マスタープラン」などの行政資料を読み込むと、「〇年後に、この駅の前に巨大な商業施設ができる」「このエリアに新駅が開業する計画がある(または道路が拡張される)」といったビッグプロジェクト(再開発計画)を事前に知ることができます。
再開発が決定したエリアは、工事関係者の流入から始まり、完成後は新たな店舗で働く従業員の需要、そして「便利になった街に住みたい」という一般の居住需要が爆発的に増加します。このようなエリアの物件を、計画が本格化する前(まだ価格が上がりきっていない段階)に仕込むことができれば、高い入居率を維持できるだけでなく、数年後には購入時よりも高い価格で売却できる(キャピタルゲインを得る)という、不動産投資において最も理想的な勝ちパターンを実現することが可能になります。
初心者向けおすすめエリアタイプ
最後に、これから1棟目を購入しようと考えている初心者に対して、最も失敗の少ない「おすすめのエリアの狙い方」を2パターン提案します。
狙い方1:都心まで電車で30?40分圏内の「近郊ベッドタウン」
東京都心部(港区や渋谷区など)の物件は、賃貸需要は最強ですが、物件価格が高騰しすぎて利回りが低く(3?4%台)、初心者がキャッシュフロー(毎月の現金回収)を目的に参入するにはハードルが高すぎます。そこでおすすめなのが、巨大な雇用を抱える都心ターミナル駅(新宿、池袋、東京など)まで、電車1本(乗車時間30?40分程度)でダイレクトアクセスできる「近郊のベッドタウン」の駅です。
神奈川、埼玉、千葉、あるいは関西であれば大阪中心部から少し離れたエリアです。「毎日都心に通う層」の強大な需要をそのまま取り込める上、都心から少し離れることで物件価格が下がり、利回り(7?9%程度)と入居率のバランスが最も良く取れる「美味しいゾーン」になります。このエリアで、駅から徒歩10分以内の物件を狙うのが王道中の王道です。
狙い方2:巨大ターミナル駅から「1?2駅だけ外した」各駅停車の駅
もう一つのテクニックが、「誰もが知っている巨大なターミナル駅(急行・特急停車駅)」の隣、もしくは2駅隣にある「各駅停車しか停まらない地味な駅」を狙う方法です。
ターミナル駅そのものの周辺は、土地代が高く、競合する新築マンションも多数存在するため価格競争が激しくなります。しかし、そこからたった1駅ずらすだけで、物件の購入価格劇的に下がり(利回りが向上し)、競合の激しさも和らぎます。入居者から見ても、「(家賃の高い)ターミナル駅の近くに住みたいが、予算が合わない。自転車でターミナル駅まで出られる(または1駅で出られる)隣の駅なら家賃が安いから、ここにしよう」という強力な妥協の着地点(受け皿需要)となります。この「ターミナル1駅外しの法則」は、全国どこの都市でも通用する、利回りと集客力を両立させるための最強のハック術です。
まとめ:データによる裏付けが「資産」を守る
不動産投資は、感覚や気合いで勝負するものではありません。徹底的な「データ分析(リサーチ)」に基づく確率のゲームです。
1. 家賃収入の根源は「建物の綺麗さ」ではなく「立地が持つ利便性」にあることを理解する。
2. 自治体のHPや国勢調査から「人口増減」「世帯数の推移」「年齢構成」の3つのリアルな数字を抽出し、客観的に需要の太さを測る。
3. 新築が乱立するエリアや、大学・工場など単一の事業所に依存するエリア(NGエリア)は、将来の空室リスクが極めて高いため絶対に避ける。
4. 複数の路線が交わる駅や、属性の異なる需要(学生・社会人・ファミリー)が混在するエリアを選ぶことで、不況に対する鉄壁の防衛陣を築く。
5. 初心者は、都心へダイレクトアクセスできるベッドタウンか、大ターミナルの「1駅隣」という、利回りと需要のスイートスポットを狙い撃つ。
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